提案書を組み立てる

構成案の段階で、一度止める

このコマのゴール

提案書ドラフトを6章構成で組み上げ、機械チェックを通して仕上げる。

このコマで何ができるようになるか

なぜこれが必要なのか

提案書は、これまでの3工程(D2の診断、D3-1の優先順位、D3-2のKPI設計)を、経営者が「これでお願いします」と決裁できる1本の文書にまとめる最後の工程です。ここでよく起きる失敗が2つあります。

1つ目は、各工程の成果物がバラバラのまま提出され、経営者が読んでも話がつながらないケースです。2つ目は、より深刻な失敗で、「診断士は何をして、外部の制作会社や広告代理店は何をするのか」が曖昧なまま受注してしまうケースです。

中小企業診断士の本来の専門は、経営・戦略の立案です。一方、Webサイトの実制作、広告運用の実作業、記事の量産といった「作る」部分は、多くの場合、外部への発注が必要になるか、診断士自身が別枠の工数を積んで対応するかのどちらかになります。ここが曖昧なまま「よろしくお願いします」で始まると、支援先は「頼んだことは全部診断士がやってくれる」と受け取り、診断士は「言われるがままに作業範囲が広がっていく」状態に陥ります。工数は青天井になり、見積りと実際の労力が乖離し、双方の関係を悪くします。提案書の段階でここを言葉にしておくことは、トラブルの予防であると同時に、診断士自身の仕事を守る実務でもあります。

押さえる考え方

提案書の6章構成 — 各章が答える問い

提案書は次の6章で構成します。

答える問い
1. 課題今どうなっているか、なぜ今の数字なのか
2. アプローチ何から、どの順でやるか(D3-1の成果物)
3. 根拠なぜこのアプローチだと言えるか
4. 提供内容診断士がやる範囲と、外部への発注が必要な範囲
5. 進め方誰が、いつまでに、どう進めるか(体制とスケジュール)
6. 次の一手まずいくらで、何から始めるか(D3-1の3段階、KPIと報告の形)

各章の冒頭に、その章の結論を1文で置くというルールを守ると、経営者は最初の1文だけを拾い読みしても大意がつかめます。D2-3で使った「最初の1枚で意思決定できる」という考え方の延長です。「根拠」章には、D2の実測データとD3-2のKPI設計を接続させ、「だからこのアプローチが妥当だ」という筋を経営者に見える形で通します。

構成案の段階で、一度止める

6章をいきなり通しで生成させると、後から大きな手戻りが起きやすくなります。まずAIに、各章の見出しと結論1文だけを出させ、6章全体の骨格を確認します。「課題」と「アプローチ」がかみ合っているか、「次の一手」が支援先の体力に合っているかを見て、違和感があればここで直します。骨格が固まってから肉付けに進みます。10ページ分を先に生成させると、章をまたいだ矛盾を見つけにくく、修正の手間もかえって増えます。

「提供内容」章で、診断士の範囲と外注の範囲を分ける

分け方の基本形は、戦略・設計・進行管理・効果検証は診断士が担い、実制作(デザイン・コーディング・撮影・広告出稿の実運用など)は外注する、というものです。ただし、ライティングや軽微な更新までを診断士自身が引き受けるケースもあり、どちらの型を採るかは各自の得意分野と体制次第です。重要なのは、型そのものよりも「どちらの箱に入る作業か」を提案書に明記し、支援先に渡すことです。

ここを曖昧にしたまま受注すると、支援先は「診断士に頼んだのだから、Webサイトの中身の修正も、広告の入稿も当然やってもらえる」と考えます。診断士は当初、戦略立案の工数で見積もっていたのに、いつの間にか実作業まで巻き取ることになり、時間あたりの実質単価が急激に下がっていきます。外注が必要な範囲の詳細は、D4-1で扱う発注書の作成時にさらに詰めます。この提案書の段階では、「ここは外部が必要」ということと、その費用が提案の金額に含まれるのか別途なのかの区別を明記しておけば十分です。続く「進め方」章では、この担当範囲をもとに、誰がいつまでに何をするかを時系列で示します。

「次の一手」章で、まず何から始めるかを示す

D3-1で作った3段階(3か月・6か月・12か月)の計画を、そのまま「次の一手」章の費用・期間の内訳に対応させます。総額だけを示すと、経営者は「高いか安いか」としか判断できません。段階ごとに示せば、「まず第1段階だけ試す」という決裁がしやすくなり、D3-1で設計した「次へ進む条件」とも整合します。

この章に載せる数字には、必ず「期間・母数・条件」の注釈をセットで添えます。「問い合わせが月2件から5件に増えます」ではなく、「初回ヒアリング時点の月間問い合わせ件数(フォーム未設置のため電話・紹介のみの集計)を母数に、設置後3か月の目安として」のように、いつの、何を基準にした数字かを明記します。注釈のない数字は、後から「本当にそうなるのか」と問われたときに崩れます。

成果を保証する表現(「必ず」「絶対に」など)は使いません。景品表示法・薬機法(D4-1で扱います)の観点だけでなく、診断士は支援先の売上を保証できる立場にないためです。

中小企業には、Web活用や販路開拓に使える公的な補助金・助成金の制度もあります。第1段階の費用感が支援先の体力に重い場合は、公的支援の活用余地に触れておくと、「次の一手」が現実的な選択肢として受け取られやすくなります。ただし個別の制度名・金額・要件は年度や自治体で変わるため、断定せず「活用できる制度がないか、あわせて確認します」にとどめます。

提出前に、検査者の立場で読み直す

プロンプト集「作った資料の数字と事実を検算する」(quality-01)を使い、数字の出典・断定している表現・支援先の資料にない情報が混ざっていないかを検査します。「作成する」立場と「批判する」立場を分けて使うことで、作成者の視点だけでは気づきにくい見落としを拾えます。この型はD2-3でも使ったもので、以降の成果物でも繰り返し使う共通の手順になります。

手を動かす手順

  1. D2の診断レポート、D3-1の優先順位つき施策表、D3-2のKPI設計書の3つをAIに読み込ませ、プロンプト集「提案書ドラフトを作る」(strategy-04)で、まず6章(課題・アプローチ・根拠・提供内容・進め方・次の一手)の見出しと結論1文だけを出させます。読む人として湘南精密工業(演習用の架空企業)の代表・中村健一様(62歳・2代目、決裁者はご本人)を指定してください。
  2. 出てきた構成案を確認します。「課題」と「アプローチ」がかみ合っているか、「次の一手」が支援先の体力に合っているかを見て、違和感があれば直させます。問題がなければ「この構成で、各章を肉付けしてください」と伝え、6章の通し原稿を生成させます。
  3. 生成された6章を通しで読み、各章の冒頭に結論が1文で置かれているかを確認します。無ければ書き直させます。
  4. 「提供内容」の章で、診断士がやる範囲と外注が必要な範囲が、表または箇条書きで明確に分かれているかを確認します。曖昧な項目があれば、「この項目は誰が担当するか、範囲を明確にして」と指示して詰めます。
  5. 「次の一手」の章が、D3-1で作った3段階と対応しているか、数字すべてに「期間・母数・条件」の注釈があるかを確認します。総額のみで段階内訳がなければ追記させます。
  6. quality-01 のプロンプトで、作成者ではなく検査者の立場から成果物全体を検査させます。指摘された箇所(誇大表現・出典のない数字など)を直します。
  7. 10ページ程度に収まっているかを確認し、03_クライアント/サンプル_湘南精密工業/03_提案/ に保存します。

つまずきやすいところ

このコマが終わったときの状態

時間配分(計120分)

このコマで残るもの

このコマで身につくAIの使い方

このコマで使うプロンプト

このコマに関係する、顧問先へお渡しする文書

実務で顧問先に説明し、合意をいただくための雛形です。そのままお使いいただけます。

当日のワークシート

演習中に手元に置いて、埋めながら進めるシートです。印刷してお使いいただけます。

ワークシートを開く →

このコマの事前学習

既存教材「WEBMARKS AIエージェントCAMP」から、このコマの予習に使うレッスンを選んでいます。

D3-3 に割り当てたレッスンを見る →

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