実行支援の実務 — 作る/選ぶ/品質を担保する

納品直前まで、自分の手で仕上げる

このコマのゴール

記事・LP文言・広告文のいずれか1点を、品質検査を通して納品直前の状態まで仕上げる。

このコマで何ができるようになるか

なぜこれが必要なのか

ここまでの3日間は、診断・戦略・提案という「考える」部分を扱ってきました。このコマからは、実際に「作る」段階に入ります。多くの診断士は、実行支援を依頼されても、記事執筆やLP(ランディングページ=広告や検索から来た人が最初に見る、購入や問い合わせに絞った1枚のWebページ)の文言、広告文といった制作を自分では手掛けられず、丸ごと外注するか、対応をお断りするかのどちらかに寄りがちでした。AIを使うと、この「作る」部分の下書きを自分の手で用意できるようになります。

ただし、ここには診断士特有の重大なリスクがあります。支援先が公開したコンテンツが景品表示法や薬機法にあたりうる誇大表現を含み、行政指導を受けた場合、その提案・作成に関わった診断士にも責任が及ぶ可能性があるということです。士業として名前が出る立場で、効果を保証する表現や根拠のない最上級表現を含む文章を世に出してしまうと、支援先だけでなく自分自身のキャリアにも傷がつきます。

AIは、指示すれば断定的な効果表現や最上級表現もそれらしく書いてしまいます。文章を作ること自体が得意な分、チェックを怠ると危険な表現がそのまま生成物に残ります。だからこそこのコマでは、「作る」と同じ重みで「検査する」を扱います。検査を1回限りの確認で終わらせず、毎回同じ型で通す習慣にすることが、実行支援を安全に引き受けるための最低条件になります。

押さえる考え方

「作る」はAIに任せてよいが、「事実」は資料の外に出さない

記事・LP文言・広告文を作らせると、AIは足りない情報を、実績・件数・年数などでもっともらしく埋めてくる性質があります。支援先の資料に書かれている事実だけを使い、実績・数字を創作しないことを徹底してください。作らせた後に「事実に基づく記述」と「一般論の記述」を分けて報告させる一手間が効きます。これにより、どの文がどの資料に裏付けられているかを後から1つずつ追えます。

誇大表現・法令リスクの検査を「型」にする

景品表示法(商品・サービスの表示が、実際より著しく優れている・お得だと誤認させることを規制する法律)と、薬機法(医薬品・化粧品・健康食品などの効果表現を規制する法律)は、業種によって関わり方が異なります。演習で扱う湘南精密工業(演習用の架空企業)のような製造業(企業間取引)であっても油断はできません。「不良率0.02%」「公差±0.005mm」のような数値を誇張して書けば、景品表示法上の優良誤認(実際より著しく優れていると誤認させる表示)にあたりうる書き方になります。健康・美容・金融など、規制がより明示的な業種であれば、なおのこと注意が必要です。

検査する観点は次の5つです。①効果を断定している表現、②根拠のない最上級表現(No.1・日本一・業界最安など)、③業種特有の規制にあたりうる表現、④他社を名指しで批判している箇所、⑤引用元が示されていない他社の情報です。

重要なのは、AIにも法的な結論を断定させないことです。「〜にあたる可能性がある」という形で指摘させ、最終判断は診断士本人と、必要に応じて専門家(弁護士など)が行うという役割分担を崩さないでください。検査結果を「大丈夫だった」と鵜呑みにせず、指摘された箇所は必ず人間の目でも見直します。この検査は「公開前の1回」だけでなく、支援先が自分たちだけで発信を続けるようになったときに渡せる型としても価値があります。

外注する場合は、発注書で「よしなに」を潰す。発注先は「選ぶ」観点を持つ

記事・LP・広告を外注するケースも多くあります。ここで曖昧な依頼をすると、後から「思っていたものと違う」というトラブルにつながります。成果物の定義(ページ数・機能まで具体的に)、検収基準(何をもって完成とするか)、無償修正の回数、素材(写真・原稿)の準備主体、納品形式とその後の更新の担当、情報の守秘・再委託の可否の6項目を、発注する前に文書化します。検収基準と修正回数の2つが、外注トラブルの大部分を占めます。この発注書は契約書そのものではなく、認識合わせのための文書という位置づけであり、法的な効力については必要に応じて専門家に確認する前提で進めます。

発注書を渡す前段階として、そもそもどの外注先に頼むかを「選ぶ」判断も、診断士の役割に含まれます。見積りの金額だけで選ぶと、検収基準を曖昧にしたまま安さだけで飛びついた結果、修正のやり取りに時間を取られ、結局は高くつくということが起こります。過去の制作実績(同業種・同規模の実績があるか)、検収・修正のルールに対する回答の具体性(曖昧に答える先ほど、後のトラブルの芽になりやすいです)、納期に対する現実的な見通しを示せるか、という3点を、発注前の確認事項として持っておくと、発注先を選ぶ判断の助けになります。

成果物は、あとから探せる形で保存する

作った成果物は、その場では分かっていても、数か月後には「どのバージョンが最新か」「どの支援先のものか」が分からなくなりがちです。ファイル名に日付と支援先名を入れる、04_成果物/ のようにフォルダの役割を決めておく、といった単純なルールを最初に決めておくだけで、後から探す手間が大きく減ります。特に複数の支援先を並行して抱えるようになると、この保存設計の有無が、伴走支援の再現性を左右します。

手を動かす手順

  1. 記事・LP文言・広告文の中から1つを選びます(例:湘南精密工業の医療機器部品の試作実績を軸にした記事)。
  2. 記事を選んだ場合はプロンプト集「支援先の記事を1本作る」(execution-01)を使い、想定読者・狙う検索キーワード・文字数を指定して下書きを作らせます。
  3. 生成された文章について、「事実に基づく記述」と「一般論の記述」を分けて報告させ、事実の部分がすべて支援先の資料(00_基本情報.mdなど)の記載と一致するか、1つずつ照合します。「不良率0.02%」は支援先の社内集計値(2025年度)であり、外部機関の認証値ではない、といった前提条件も、照合の際に一緒に確認してください。
  4. プロンプト集「誇大表現・法令リスクを検査する」(quality-02)で、成果物を検査させます。「該当箇所/なぜ問題になりうるか/言い換え案」の表を確認します。
  5. 指摘された箇所は、AIの言い換え案をそのまま採用せず、診断士自身の言葉で最終判断して直します。
  6. 制作の一部を外注する想定がある場合、プロンプト集「外注する場合の発注書を作る」(execution-02)で発注書のたたき台を作り、検収基準・修正回数が明記されているか確認します。
  7. 発注先を選ぶ場面を想定し、過去の実績・検収ルールへの回答の具体性・納期の見通しの3点を、確認リストとして書き出します。
  8. 完成した成果物を「納品直前の状態」として 04_成果物/ に、支援先名と日付が分かるファイル名で保存します。

つまずきやすいところ

このコマが終わったときの状態

時間配分(計120分)

支援先が誇大表現で行政指導を受けると、提案した診断士に返ります。景品表示法・薬機法にあたりうる断定表現の検査を、ここで型にします。

このコマで残るもの

このコマで身につくAIの使い方

このコマで使うプロンプト

このコマに関係する、顧問先へお渡しする文書

実務で顧問先に説明し、合意をいただくための雛形です。そのままお使いいただけます。

当日のワークシート

演習中に手元に置いて、埋めながら進めるシートです。印刷してお使いいただけます。

ワークシートを開く →

このコマの事前学習

既存教材「WEBMARKS AIエージェントCAMP」から、このコマの予習に使うレッスンを選んでいます。

D4-1 に割り当てたレッスンを見る →

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