自分の“型”をAIに移す
その場限りの指示から、再利用できる手順書へ
自分の定型業務を1つ選び、AIが再現できる手順書に変えて、実際に動かす。
このコマで何ができるようになるか
- 自分が繰り返している定型業務を洗い出し、AI化に向くもの・向かないものを見極められるようになります。
- その場限りの指示ではなく、何度でも呼び出せる手順書に変換できるようになります。
- 出力の品質が安定しない原因を切り分け、指示を直せるようになります。
- 自分の定型業務を1つ選び、実際にAIで動かして確認するところまで、このコマの終わりに完了させます。
なぜこれが必要なのか
これまでの2コマでは、生成AIに情報を渡す前提(何を渡してよいか)と、支援先の情報をどう読ませるか(ナレッジ台帳の設計)を扱いました。ここまでは、いわば「AIに材料を渡す準備」です。このコマで扱うのは、もう一段進んだ話——「自分がいつも同じやり方で行っている作業を、AIに任せられる形に変える」ことです。
診断士の実務には、専門的な判断が必要な部分と、判断そのものではなく「整理する」「決まった形に当てはめる」部分が混ざっています。ヒアリングメモの整理、月次報告書の骨子づくり、面談前の準備リスト——こうした作業は、案件ごとに中身は変わっても、進め方の型は毎回ほぼ同じです。この「型」を、そのつど頭の中から取り出して指示するのではなく、一度言葉にして手順書として残しておけば、次からは短い呼びかけで同じ質の成果物を再現できます。
もう一つ大事なのは、指示を出しても出力が思ったとおりにならないことがある、という現実への向き合い方です。ここで原因を切り分けられるようになっておくと、残り3日間で作る診断レポートや提案書の質が安定します。
押さえる考え方
診断士が繰り返している定型業務の棚卸し
まず、自分の1週間・1か月の仕事を思い浮かべ、「毎回ほぼ同じ手順で行っている作業」を洗い出します。初回ヒアリングの音声メモを議事録にする、面談前に準備リストを作る、複数の顧問先の月次報告書をまとめる——こうした作業は、案件ごとに固有の内容(誰の・何の話か)は変わっても、整理の型そのものは変わらないことが多いはずです。
すべての業務がAI化に向くわけではありません。目安になるのは、「材料(メモ・資料)を渡せば、型に沿って整理できる作業か」どうかです。逆に、経営者の表情や場の空気から判断するような、材料として言葉にしにくい部分が中心の作業は、この講座で扱う型には向きません。まずは棚卸しをして、AI化しやすい作業から手を付けるのが近道です。
その場限りの指示ではなく、再利用できる手順書にする
配布された作業環境の02_手順書/には、AIに実行させる作業の型があらかじめ用意されています。「湘南精密工業(演習用の架空企業)について、Web診断の手順で診断してください」のように伝えると、AIは該当する手順書を見つけて、そこに書かれた手順どおりに動きます。手順書は完成品ではなく、使いながら自分のやり方に育てていく前提のものです。
その場で思いついた指示は、その場限りで消えてしまいます。同じ作業を次の支援先でも頼みたければ、また一から指示を組み立て直すことになり、しかも毎回微妙に言い回しが変わって、出力の質にばらつきが出ます。指示を1回作って終わりにせず、ファイルとして残しておく——この一手間が、「その場限りの相談」と「再利用できる資産」の分かれ目になります。
出力の品質が安定しない原因と、指示の直し方
同じような指示を出しているつもりでも、出力の質にばらつきが出ることがあります。原因の多くは、指示の粒度にあります。「議事録を整理して」とだけ伝えると、見出しの立て方も詳しさも、AIが自分で判断した形になります。一方で、「この5項目の見出しで」「書かれていないことは補わない」「読む人はこういう立場の人」と条件を添えるほど、出力は安定します。
もう一つの原因は、「読む人」の情報が抜けていることです。同じ議事録という素材でも、社内向けの整理と経営者向けの要約では、必要な粒度がまったく違います。誰が読むかを指示に含め忘れると、AIはどちらともつかない中途半端な文章を返してきます。出力が安定しないと感じたら、まず「条件が足りているか」「読む人の情報が入っているか」の2点を疑ってください。
手を動かす手順
- 自分が毎月・毎回行っている定型業務を1つ選びます(例:顧問先の月次報告書の作成、聞き取りメモの整理、面談前の準備リストづくりなど)。
- 選んだ業務に近い演習として、まず配布フォルダの議事録を使い、簡単な言葉で指示を打ってみます。「湘南精密工業について、初回ヒアリングの議事録を整理してください」のように、条件をほとんど付けずに実行します。
- 出てきた結果を確認します。それなりに整理はされますが、見出しの立て方や詳しさは、AIが自分で判断した形になっているはずです。
- プロンプト集の「初回ヒアリングの議事録を整理する」(
hearing-01)を使い、同じ議事録をもう一度整理させます。手順3の出力と見比べ、条件を足したことで何が変わったかを書き出しておきます。 - 続けて、プロンプト集の「経営者に見せる要約1枚を作る」(
hearing-02)を使い、同じ議事録から経営者向けの1枚要約を作ります。読む人の情報(湘南精密工業の代表・中村健一様、62歳・2代目、Web・ITの専門知識はない前提)を指示に含めることを忘れないでください。 - ここまでの体験を踏まえ、手順1で選んだ自分の定型業務に戻ります。移動中に吹き込んだ音声メモから議事録を作る業務であれば、プロンプト集の「面談の音声メモから議事録を作る」(
office-01)が近い形です。自分の業務内容に合わせて、①指示できる粒度まで分解する②自分がやること/AIに任せられることを分ける③AIに任せる部分はそのまま使える指示文にする、という3点を満たす手順書を組み立てます。 - できあがった手順書に、診断士本人の判断が必要な部分が、AIに任せる側に紛れ込んでいないかを自分の目で確認します。
02_手順書/に保存し、実際にその指示文を使って1回動かします。動いた結果を見て、直したい点があればその場で手順書に書き足します。
つまずきやすいところ
- AI化する業務を選べない:材料(メモ・資料)を渡せば型に沿って整理できる作業かどうかを基準にします。判断そのものが中心の業務は、今日はいったん外します。
- 出力が一般論ばかりで、支援先固有の話になっていない:指示の中に「書かれていないことを補わない」という一文が入っているか確認します。この一文の有無で結果が変わります。
- 経営者向け要約が、最初の出力とあまり変わらない:「読む人」の情報(年齢・立場・ITリテラシー)を指示に入れ忘れていないか確認します。ここが要約の文体を決めます。
- 手順書に、自分にしかできない判断まで書き込んでしまう:「判断は私が行う」という一文を加えます。任せてよい部分だけが自然に切り出されます。
- 手順書を作って終わりにしてしまいそうになる:実際に1回、その指示文を使って動かします。動かして初めて、再現できる手順書かどうかが分かります。
このコマが終わったときの状態
- 自分が繰り返している定型業務を1つ以上洗い出せた
- 曖昧な指示と具体的な指示で、出力の質がどう変わるかを自分の言葉で説明できる
- その場限りの指示と、再利用できる手順書の違いを説明できる
- 自分の定型業務を1つ、AIが再現できる手順書に変え、実際に動かして確認した
- できあがった手順書を
02_手順書/に保存した
時間配分(計120分)
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20分講義診断士が繰り返している定型業務の棚卸し
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25分講義その場限りの指示ではなく、再利用できる手順書にする
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15分講義出力の品質が安定しない原因と、指示の直し方
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50分演習【ワーク】自分の定型業務(ヒアリングシート・報告書の骨子など)を1つ選び、AI化して実際に動かす
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10分共有本日のまとめ・次回までの宿題
このコマで残るもの
- 自分の定型業務を1つAI化したもの(実際に動く状態)
このコマで身につくAIの使い方
このコマで使うプロンプト
当日のワークシート
演習中に手元に置いて、埋めながら進めるシートです。印刷してお使いいただけます。
このコマの事前学習
既存教材「WEBMARKS AIエージェントCAMP」から、このコマの予習に使うレッスンを選んでいます。