AIに読ませる「支援先ナレッジ」を設計する
毎回、同じ説明を繰り返す状態から抜ける
担当先1社のナレッジ台帳を作り、AIに読ませることで出力がどう変わるかを体感する。
このコマで何ができるようになるか
- 支援先の情報をフォルダに集約し、AIに直接読みに行かせる状態を作れるようになります。
- 「手順(型)」と「材料(情報)」を分けて管理する考え方を理解し、自分の支援先フォルダに当てはめられます。
- AIが読みやすい記述形式(Markdown)の最低限のルールを使えるようになります。
- ナレッジ台帳を作る前と後で、AIの出力がどう変わるかを自分の目で確認します。
なぜこれが必要なのか
支援先とのやり取りが数か月続くと、議事録・実測データ・過去の提案書といった資料が積み上がっていきます。そのつどチャット画面に背景を貼り付けて説明していると、毎回「この会社はこういう会社で、これまでこういう経緯があって……」と一から書き直すことになります。この説明自体に時間がかかるうえ、説明のたびに内容が微妙にぶれるという問題も起きます。
もう一つの問題は、資料が増えるほど「どれが最新の情報か」が分かりにくくなることです。初回ヒアリングで聞いた売上の数字と、その後の決算資料の数字が食い違っている、といったことは実務でよく起こります。AIに丸ごと資料を読ませたとき、この食い違いを黙って片方だけ採用されてしまうと、誤った前提のまま診断が進んでしまいます。
このコマでは、フォルダに情報を集約して読ませる方法と、資料同士の食い違いを検出させる指示の出し方を身につけます。あわせて、AIが読みやすい最低限の書式も押さえます。ここで作る土台の上に、残り3日間の診断・提案・実行支援がすべて乗ります。
押さえる考え方
なぜ毎回、同じ説明を繰り返すことになるのか
背景説明をチャットのたびに貼り付ける代わりに、支援先の情報をフォルダにまとめておき、AIに直接読みに行かせます。同じ資料から出発するため、説明のたびに内容がぶれることもなくなり、コピー・貼り付けの手間も減ります。配布された作業環境の03_クライアント/サンプル_湘南精密工業/(演習用の架空企業)は、この考え方に沿って00_基本情報・01_ヒアリング・02_診断・03_提案・04_レポートの5つに分けて作られています。
1本のファイルだけを読ませるのであれば、これまでのチャット型AIの使い方とあまり変わりません。今日のコマではフォルダ全体を横断して読ませます。ここで効くのが「複数のファイルで数字が食い違っている場合は、食い違い自体を報告する。勝手にどちらかを採用しない」という指示です。この一文を入れずに読ませると、AIは古い資料と新しい資料のどちらかを、根拠のないままなんとなく選んでしまいます。食い違いを見つけて報告させることは、資料を要約させること以上に価値があります。
手順(型)と材料(情報)を分けて管理する — フォルダ設計の基本
配布された作業環境は、01_ナレッジ/(診断士の実務知識)、02_手順書/(AIに実行させる作業の型)、03_クライアント/(支援先ごとの資料=材料)という3つに分かれています。この分け方には理由があります。「手順(どう進めるか)」と「材料(何を扱うか)」を同じ場所に置いてしまうと、支援先が変わるたびに手順まで作り直すことになったり、逆に手順を直したくても支援先の情報に紛れて見つけにくくなったりします。
分けておけば、02_手順書/にある型はどの支援先にも使い回せますし、03_クライアント/の中身だけを支援先ごとに増やしていけます。「毎回言わなくて済むことを先に書いておく」常設の指示書も、この「手順」側に置く情報の一種です。配布された作業環境には、あらかじめこの指示書が用意されており、敬体で書くこと、支援先フォルダをまたいで読まないこと、資料にない数字を書かないこと——こうした共通ルールを依頼のたびに書く代わりに1か所にまとめてあります。AIは起動するたびにこれを自動で読み込み、毎回それに従って動きます。
AIが読みやすい記述形式の最低限(Markdownの基本)
AIに読ませる資料は、Word文書のように見た目を装飾する必要はありません。行の先頭に記号を置くだけで構造を示す、Markdown(マークダウン)という軽い書式で十分です。覚える記号は3つで足ります。#を行頭に置くと見出しになり、##のように重ねるほど小さな見出しになります。-を行頭に置くと箇条書きになります。|で区切ると表になります。
装飾のための操作を覚える必要がなく、書いた記号がそのまま構造として伝わるため、AIにとっても人にとっても読み違いが起きにくい形式です。今日作るナレッジ台帳も、この最低限の書式で十分作れます。太字や記号を増やしても、AIの理解が良くなるわけではありません。構造が伝わることを優先してください。
手を動かす手順
03_クライアント/の中の、自分が選んだ支援先フォルダを開き、00_基本情報・01_ヒアリング・02_診断・03_提案・04_レポートという構成を確認します。- 配布された追加資料(議事録・実測データ)が、対応するサブフォルダに正しく置かれているかを確認します。置き場所に迷ったら
03_クライアント/_index.mdを開きます。 - まず、フォルダを読ませずに「この支援先の課題は何ですか」とだけ聞いてみます。会社名しか伝えていない状態での出力を書き留めておきます。
- プロンプト集の「支援先フォルダの全体像を要約させる」(
knowledge-01)を使い、フォルダ全体を横断して読ませ、5項目(会社の概要/課題/これまでの経緯/数字と出典/不足している情報)の要約を出力させます。 - 手順3と手順4の出力を見比べ、フォルダを読ませたことで何が支援先固有の情報に変わったかを書き出します。
- 出力に、項目ごとの出典(どのファイルに書かれていたか)が明記されているかを確認します。書かれていなければ、指示に「どのファイルに書いてあったか明記して」を加えてやり直します。
00_基本情報.mdを開き、見出し・箇条書き・表がどう使われているかを確認します。空欄や情報が古い箇所があれば、Markdownの書式で自分の言葉で埋め直してみます。- 整えたナレッジ台帳を保存し、隣の受講者と「フォルダを読ませる前後でどう変わったか」を共有します。
つまずきやすいところ
- フォルダのどこに何を置くべきか毎回迷う:
03_クライアント/_index.mdに置き場所の一覧があるので、そこを開きます。 - 全体要約をさせたら、古い資料の数字と新しい資料の数字が混ざって出てきた:「食い違いがあれば報告して、勝手に採用しない」という条件が指示に入っているかを確認します。
- フォルダを読ませる前後で、出力の違いがよく分からない:手順3の出力を書き留め忘れていないか確認します。比較対象がないと、違いは体感できません。
- Markdownの記号を、装飾のつもりで使いすぎてしまう:見出し・箇条書き・表の3つで十分だと思い出します。
- 常設の指示書を大きく書き換えたくなる:今日はまず中身を確認するだけにとどめます。書き換えは、使い方に慣れてからで十分です。
このコマが終わったときの状態
- 支援先フォルダ(00〜04)の構成と、どこに何を置くかを説明できる
- フォルダを読ませない場合と読ませた場合で、出力の違いを比較した
- 複数ファイルを横断して読ませ、出典つきの全体要約を1本出力した
- Markdownの見出し・箇条書き・表を使ってナレッジ台帳を書ける
- 資料の食い違いを「報告させる」という指示の効果を、自分の言葉で説明できる
時間配分(計120分)
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20分講義なぜ毎回、同じ説明を繰り返すことになるのか
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25分講義手順(型)と材料(情報)を分けて管理する — フォルダ設計の基本
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15分講義AIが読みやすい記述形式の最低限(Markdownの基本)
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50分演習【ワーク】担当先1社のナレッジ台帳を作り、AIに読ませて出力がどう変わるかを比べる
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10分共有共有・つまずき解説
このコマで残るもの
- 支援先ナレッジ台帳(担当先1社分)
このコマで身につくAIの使い方
このコマで使うプロンプト
当日のワークシート
演習中に手元に置いて、埋めながら進めるシートです。印刷してお使いいただけます。
このコマの事前学習
既存教材「WEBMARKS AIエージェントCAMP」から、このコマの予習に使うレッスンを選んでいます。