診断のフレームと、「AI検索」という新しい評価軸

指名検索と非指名検索を分けて捉える

このコマのゴール

デジタル現状把握の5点を押さえ、支援先がAI検索で出てくるかを実測して判定表にする。

このコマで何ができるようになるか

なぜこれが必要なのか

マーケティング診断の基本は、「誰に・何を・どこで・いくらで」という4つの問いに答えられる状態を作ることです。支援先の経営者にこの問いを投げても、明確に答えられないことは珍しくありません。デジタル面の実測は、この4つの問いのうち、特に「どこで」(見込み客がどこで自社を見つけるか)を、印象ではなく数字で裏づける作業だと位置づけると、この先3日間で扱う診断・戦略・提案の中での役割がはっきりします。

「このサイトはSEOが弱いですね」「もっとWebに力を入れたほうがいい」——診断の現場でこうした指摘をすること自体は難しくありません。しかし、この言い方のままでは、経営者は何をどう直せばよいか判断できませんし、診断士の側も、なぜそう言えるのかを問われたときに答えに詰まります。印象で語った指摘は、印象で反論されて終わってしまいます。

もう一つ、近年になって加わってきた観点があります。見込み客が検索エンジンではなく、生成AIに直接「〇〇ができる会社は?」と尋ねる場面が増えてきています。これは従来の検索順位のチェックリストには含まれていなかった観点で、多くの診断士にとって、まだ実測の型が定着していない領域です。

このコマでは、印象を実測に置き換える具体的な手順を身につけます。実測は特別な技術がなくても、公開されている情報をブラウザで開いて確認するだけで行えます。手間はかかりますが、専門知識が要る作業ではありません。

押さえる考え方

「誰に・何を・どこで・いくらで」— マーケティング診断のフレーム

支援先の実測に入る前に、まず「誰に(顧客層)・何を(商品やサービス)・どこで(顧客との接点)・いくらで(価格・条件)」という4つの問いで、支援先の事業を整理します。この4つは、D2〜D3で扱う診断・戦略・提案のすべてに関わる、もっとも基本のフレームです。デジタル面の実測は、この中の「どこで」を、印象ではなく数字で裏づける作業にあたります。「誰に」「何を」「いくらで」は主にヒアリングで、「どこで」は主に実測で埋めていくという役割分担を意識すると、このあとの手順の位置づけが分かりやすくなります。

デジタル現状把握の5点(検索・自社サイト・広告・SNS・AI検索)

「どこで」の実態を漏れなく捉えるために、支援先のデジタル面の現状は5つの点に分けて確認すると漏れが減ります。①検索は、社名以外の言葉で見つけてもらえるかどうかです。②自社サイトは、技術面とコンテンツ面の2つを見ます。技術面はSSL(通信を暗号化する仕組みです。対応していないと、最近のブラウザは「保護されていない通信」といった警告を出します)やスマートフォン対応、表示速度といった土台の部分で、コンテンツ面は各ページが何をどこまで具体的に説明できているかです。③広告は、検索連動型広告やSNS広告を出しているか、出しているならどの程度の露出かです。④SNSは、アカウントの有無・更新頻度・フォロワーとのやり取りの有無です。そして⑤AI検索は、生成AIに尋ねたときに名前が挙がるかどうかです。

このうち③広告と④SNSは、支援先が「そもそも何もやっていない」というケースも多くあります。その場合は「未実施」であること自体が実測結果になります。未実施を悪いことと決めつけず、まずは現状把握として淡々と記録します。

実測は「公開されている範囲」にとどめる

実測でブラウザから確認できるのは、あくまで公開されているページだけです。アクセス解析のようなログインが必要なデータは、この段階では扱いません。支援先から正式に提供を受けてから扱う情報です。フォームへの入力や送信のような、サイトに書き込みが発生する操作も行いません。実測はあくまで「見て確認する」範囲にとどめます。

AI検索プローブ — 指名検索と非指名検索を分けて捉える

AI検索プローブとは、見込み客が生成AIに尋ねそうな質問をあらかじめ作り、実際に自社が挙げられるかどうかを確かめる実測手法です。ここで大事なのは、質問と回答欄をセットでAIに作らせないことです。回答欄を空のままにして質問だけを作らせ、その質問を診断士が自分の手で生成AIの画面に打ち込み、出てきた結果を見て判定を書き込みます。AIに「自分ならどう答えるか」を先回りで書かせてしまうと、それは実測ではなく予測になってしまいます。

質問は、指名検索(「湘南精密工業について教えて」のように、社名を含む質問)と、非指名検索(「神奈川県で医療機器部品の試作ができる会社は?」のように、社名を含まない質問)の2種類に分けて設計します。指名検索で出てこないのは致命的な状態ですが、非指名検索で出てくるかどうかは、また別の実力を示す指標です。見込み客の多くは、社名を知らない段階で生成AIに相談します。非指名検索で出てこないという結果は、指名検索で出てこないのと同じくらい重い課題として扱う必要があります。

読み取れることと、読み取れないことを両方書く

実測データを整理するときは、分かったことだけでなく、この実測では分からなかったことも書き残します。01_ナレッジ/経営診断のフレームに挙げられている危険信号(特定取引先への依存度の高さ、複数期にわたる売上の減少、営業体制が実質1人であること、Webサイトの更新が長期間止まっていること、問い合わせ手段が電話とFAXしかないこと、外部の人が「何ができる会社か」を説明できないこと)は、湘南精密工業(演習用の架空企業)のヒアリング内容と実測データを照らし合わせると、そのすべてに当てはまることが確認できます。印象ではなく、実測とヒアリングの記録という根拠があるからこそ、こうした指摘は経営者に届く形になります。

手を動かす手順

  1. 湘南精密工業(演習用の架空企業)のヒアリング記録を使い、「誰に・何を・どこで・いくらで」の4つの問いに、今の時点で分かる範囲で答えを書き出します。空欄が残る問いがあれば、それも記録しておきます。
  2. 03_クライアント/サンプル_湘南精密工業/02_診断/サイト実測データ.md を開き、検索・自社サイト・広告・SNS・AI検索の5点について、どのような項目が実測されているかをひととおり確認します。
  3. プロンプト集の「支援先サイトの問題点を洗い出す」(diagnosis-01)を使い、実測データから問題点の表(問題点/何が起きているか/経営にどう効くか/直す難易度)を出力させます。
  4. 出力された表の「何が起きているか」欄が、サイト実測データ.md のどの数字と対応しているかを1行ずつ照合します。対応が取れない指摘があれば、指示に「どの数字を見てそう言えるのかを、根拠として添えて」という条件を強めて、もう一度出力させます。
  5. プロンプト集の「AI検索プローブ表(10問)を作る」(diagnosis-02)を使い、湘南精密工業の情報(会社名・業種・商圏・主力商品)を埋めて、指名検索・非指名検索を組み合わせた10問の表を作ります。この時点では回答欄は空のままにしておきます。
  6. 作った10問を、実際に生成AIの画面で1問ずつ自分の手で打ち込み、判定欄を自分で埋めます。サイト実測データ.md にある「AI検索での見え方」の表は、この実測がすでに1回行われた結果の例です。
  7. 指名検索と非指名検索とで、結果に違いが出ているかを確認します。
  8. ここまでの実測結果一式を 02_診断/ の下に保存します。

つまずきやすいところ

このコマが終わったときの状態

時間配分(計120分)

このコマで残るもの

このコマで身につくAIの使い方

このコマで使うプロンプト

当日のワークシート

演習中に手元に置いて、埋めながら進めるシートです。印刷してお使いいただけます。

ワークシートを開く →

このコマの事前学習

既存教材「WEBMARKS AIエージェントCAMP」から、このコマの予習に使うレッスンを選んでいます。

D2-1 に割り当てたレッスンを見る →

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